高い満足度を追求する伝統旅館が行き着いた、ES向上と新サービス

望湖楼
代表取締役社長 中島 伸之 氏

2018.03.01

レポート

山陰八景に数えられる東郷湖畔の西岸に佇む望湖楼は、その名の通り湖を望む湖畔の宿だ。約90の客室ほぼすべてレイクビュー。温泉は源泉掛け流しで、特に湖上に浮かぶ露天風呂は雄大な景色と一体になれる極上の空間だ。空と湖に身を預ける開放感を求めて、国内外はもちろん、地元の人々にも忘新年会や法要など親交を温める場として親しまれている。

本記事では、旅館の伝統的な勤務シフトであるたすき勤務の解消と、泊食分離という新サービスの、内外両面へ向けたイノベーションで客の満足度向上をめざす取り組みについて、代表取締役の中島 伸之氏の話を交えながら紹介する。

企業データ

望湖楼

創業80年を超えるはわい温泉の老舗旅館。2017年より夏季限定で、東郷湖の夕景スポットでのバーベキューディナーを始める。

住所:東伯郡湯梨浜町はわい温泉4-25
電話:0858-35-2221

ゆとりある体制をつくり、もてなしを強化する

望湖楼は創業昭和6年。観光客にも地域にも広く愛され、順調に成長を遂げてきた。2016年の鳥取県中部地震の際も、集客面での打撃は少なかった。だが中島氏は、改革の必要性を鋭敏に感じ取っていた。

中島氏:まだ表面化していないものの、いくつかの課題を感じていました。当館には年齢も性別も多様なお客さまがお見えになります。リピーター率も高い。いま以上の満足を感じていただくため、余裕をもってもてなせる体制づくりを始めたかったのです。

RAJCのセミナーに参加し、専門家派遣を受けて、方向性を模索した。
打ち出した取り組みは2つ。1つは従業員の働き方改革、もう1つは泊食分離というオプションの考案だ。

たすき勤務の解消がもたらすESとCS

働き方改革に向け、フロント、接客、管理の3部署代表者らによる業務改善会議を設立した。代表が各部署の意見を集約して定期的に話し合う。ここで、「たすき勤務」の見直しが決定された。併せて朝食も配膳式からバイキングに変更し、勤務時間を短縮する。

中島氏:1日に2度の出勤を要するたすき勤務を見直し、基本的には午後1度の出勤で済むようにします。まずは3分の1の変更をめざします。
目的は従業員に「楽」をしてもらうこと。楽をしてゆとりが生まれたら、接客時間を増やす。そして従業員自身の時間を充実させてほしい。それが、顧客満足度の向上に繋がると考えています。

このほか、畳で膳を上げ下げしていた食事を和テーブルのワゴン配膳に変えるなど、「楽」のための改善が続けられている。

旅館外で名物を食べる泊食分離を実施。より満足度の高い旅を提供する

泊食分離とは、滞在する旅館とは別の地元の飲食店で食事をするスタイルだ。

望湖楼は夕食を提携先の近隣飲食店で食べられるプランを提示し、地元人気店やご当地食材に触れる機会を創出。要望に応じて送迎も実施する。旅館を飛び出し、地元に飛び込んで目当ての食を楽しむ体験は、旅の楽しみを一層深める。

食に限らず、色浴衣やアロハシャツ貸し出しなど、さまざまな「選べる」を用意して付加価値を高める。

中島氏:泊食別離で宿泊客の選択肢を広げ、より高い満足度をめざしています。正直、夕食の売り上げが外に行ってしまうのは少し痛い(笑)。ですが、地元でもてなしていただけるのはお客さまには良いことだと思います。自分たちだけで地域のすべてを紹介するのは大変ですから、地元のお店に任せた方がいい。協力店も増えています。

客、従業員、会社、すべてが上昇するスパイラルを巻き起こす

従業員の満足度向上と、客に多様な選択肢を提供するサービス向上、この2者は別の方向を向いているようで、同じ場所をめざしている。

中島氏:どちらも、目的はお客さまのより質の高い滞在のため。お客さまの満足・社業発展・社員の生活の向上で上昇スパイラルを描いて、労働時間短縮、待遇改善へ導きたい。今後は働き方の多様性を追求し、人材確保に繋げたいと思います。
旅館の伝統を守りつつ、時代に合った合理性、機能性を取り入れながら変化を楽しめる会社でありたいですね。

課題が問題となって噴出する前に、先手を打つ形でイノベーションに取り組んだ望湖楼。その先見性が、活気ある職場と客の人気を支えている。

RAJC(鳥取県地域活性化雇用創造プロジェクト推進協議会)の
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RAJCウェブサイト

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