創業50周年に事業を次世代へ承継。新時代の幕を開けた全国区のもずくブランド。

株式会社海産物のきむらや
代表取締役社長 木村 美樹雄 氏

2023.02.13

RAJC Report 編集部

株式会社海産物のきむらやは、もずく酢やアジの南蛮漬けなど、海産物の加工品を製造販売している。特にもずく酢は無添加調理を基本とし、生活協同組合でも取り扱われるなど全国トップクラスのシェアを誇る。また社内に研究施設を有し、もずくから抽出したフコイダンを研究。これまでに17件の特許を取得し、「フコミン」の商標で健康食品として販売している。創業50周年の節目に、事業を息子の美樹雄氏に承継。創業の精神を引き継ぎつつさまざまな改革に着手し、新たなスタートラインに立つ。

本記事では、100人企業に育ったきむらやが社長交代を機にミッションを再構築し、従業員の意識を高めるイノベーションに取り組む姿を紹介する。

企業データ

株式会社海産物のきむらや

もずくを主とする海産物加工品、もずく由来のフコイダン製品の開発・製造販売を手がける。

住所:鳥取県境港市渡町3307
電話:0859-45-6555

家族的な経営から組織運営体制へシフト。ミッション・ビジョンを策定し、従業員の羅針盤に

海産物のきむらやは現会長・木村隆之氏が一代で従業員100人を超える企業に成長させた。2022年10月1日、2代目社長に就任した木村美樹雄氏は、都市部の大手不動産デベロッパーに9年間所属し、組織運営を従業員の立場で経験。きむらやも創業時の体制からステップアップする必要性を感じていた。真っ先に取り組んだのが、ミッション・ビジョンの策定だ。

木村氏:先代は強いリーダーシップで会社を牽引しましたが、私の代では、一人一人が理念を理解しリーダーが各部門を運営する、総合力を生かした経営で時代を乗り越えたい。そのためにミッション・ビジョンの策定が欠かせないのです。

部門同士の意見が異なっても、ミッション・ビジョンに照らせば速やかな解決が望める。何が活動の目的かを常に確認できる羅針盤だ。

RAJCの専門家を交え、社員の意見から作り上げていく

改革に先駆けて、木村氏は先代から聞き取った創業の精神を明文化し、社員に伝えた。その上で、ミッション・ビジョンの策定は11人の部門リーダーらによる協議形式を採った。

木村氏:自分たちの思い、したいことが反映されるので、その後のモチベーションになります。経営者からの押しつけではなく、自分事になる。自分たちで作るという過程が大切なのです。

策定プロジェクトは、RAJCの専門家による5回のワークショップと、その間の合宿で進める。

木村氏:経営者がファシリテーションすると気を遣うでしょうし、外部の人に進めてもらう方がいい。専門家の知見や他社の事例なども参考に、より意見を出しやすい環境を作っていただいています。

リーダーはプロとして各部の希望を伝え、木村氏も社員の思いを聴く良い機会となっている。

努力が報われ、一人一人の強みが生きる人事評価へ。人材育成を評価対象にして促進する

ミッション・ビジョン策定と並行して取り組んでいるのが、人事評価制度とその運用方法の策定だ。人材育成のためにも、透明性の高い給与体系・考課制度の策定は急務と捉えている。

木村氏:給与額の理由について透明性を高め、得意な部分を伸ばす、加点方式の人事評価にしたい。上司と部下が日ごろから信頼関係を築いた上で評価を伝え、社員の成長を助ける会社にしたいですね。

人事評価、人材育成、給与体系を一連のプロジェクトとし、RAJCの専門家、外部社会保険労務士とともに構築を進めている。長期・短期の会社の目標を示し、各自の働きがどのように会社に貢献できているかを明らかにできる体制を目指す。管理職には人材育成に対するインセンティブを設け、後進の育成を促す。 最も大切にしたいのは、努力が報われ、一人一人の強みを生かす評価にすること。また管理職希望かどうかも調査し、適材適所につなげていく。

「人々の幸せに貢献する」創業の精神を受け継ぎ、社員が成長できる企業を作る

自然のものを自然のままにおいしく提供するきむらやの願いは、人々の幸せに貢献すること。もずくの産地である沖縄・伊平屋島と境港の小学生の交流も26年間続けて来た。それらの伝統はこれからも守り続けて行く。

木村氏:今後は社員に対しても、人事評価、人材育成、給与制度などを通して働きやすい環境を作り、「きむらやに行けば成長できる」「ここに入りたい」と思われる会社にしたい。

人材はいまも将来も限られている。機械化やDXを進め、手をかけるべき部分に人を配置していく。人材の高度化を図り、他社に望まれるほど価値の高い食のプロに、立派に育て上げるのがきむらやの矜持だ。


SEMINAR

セミナー紹介

■株式会社海産物のきむらやの場合

専門家派遣を活用し、経営理念およびそれをベースとした人事評価制度とその運営方法を策定

専門家派遣

事業者の抱える課題を解決し、雇用環境の改善や生産性の向上を図ることで、正社員を雇用しようとする意欲的な取組を支援するため、専門家の派遣を行います。

対象者:
雇用環境の改善や生産性向上に向けた具体的な取組支援を希望する、自動車関連、情報関連、観光、食、医療・ヘルスケア分野などの事業者


VOICE

働く人の声

フコイダンと酵母の研究で新たなビジネスチャンスを作りたい

主席研究員 舟越 稔さん

アメリカのイェール大学で酵母の研究をしていましたが、家庭の事情で地元にUターン。研究職を求め、縁あってきむらやに採用いただきました。現在は開発研究室で研究員たちともずくの成分であるフコイダンの機能性を研究し、過去には抗がん剤の副作用を抑える働きについて論文を発表しました。
また、米子市の地ビール業者に市の花であるツツジから採取した酵母を提供し、商品化されました。
いま会社は成長し、時代に合うより働きやすい組織になってきたと感じます。
評価改革もやる気に繋がると思います。新ビジネスにできる新素材を研究側から提供し、フコイダンの販売促進により貢献できる研究開発を行うのが目標です。

RAJC(鳥取県地域活性化雇用創造プロジェクト推進協議会)の
支援事業やセミナー開催情報については、RAJCウェブサイトをご覧ください。

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