コロナ禍を乗り越え、効率化と人材育成に取り組む県内観光産業の基幹組織。

一般財団法人 鳥取県観光事業団
マネージャー 川村 重徳 氏

2023.02.06

RAJC Report 編集部

一般財団法人鳥取県観光事業団は、日本最大級のフラワーパークであるとっとり花回廊、二十世紀梨記念館 なしっこ館など、鳥取県が設置した8つの観光施設を指定管理者として管理運営し、観光客誘致、広報活動などを行っている。しかしコロナ禍で海外客はほぼ途絶え、邦人客も半分ほどにまで落ち込んだ時期もあった。コロナ禍前ほどに戻るのは当面厳しいという見通しのもと、アフターコロナに向かって課題を洗い出し、ハード・ソフト両面から改革に取り組んでいる。

本記事は、鳥取県の観光産業において重要な役割を果たす財団が、コロナ褐によって変化する観光ニーズを捉え直し、運営のあり方・今後への戦略の再構築に取り組む姿を紹介する。

企業データ

一般財団法人 鳥取県観光事業団

指定管理者として鳥取県が設置した8つの観光施設の管理運営、観光客誘致活動、広報などを行う。

住所:鳥取県鳥取市相生町4丁目411
電話:0857-38-2346

評価の分析+デジタル導入で運営改善。理事長自らセミナーを受講し、改革機運を高める

2020年3月ごろから顕在化し始めたコロナ禍は、鳥取県の観光産業を直撃した。財団が管理する多くの施設も一時休館。再開した後も来訪を勧めて良いのか戸惑いを抱え続け、存在意義を自問自答しながら今後の課題を探ってきた。
安田達昭理事長は、トップとして率先してRAJCのセミナーに積極的に参加してきた。

安田氏:人材育成やマーケティング、デジタル経営などの講座を受講しました。コロナ禍の影響は長期に及んでいますが、かねてより経営、雇用安定への取組が必要だと感じていました。自分たちのサービスを知っていただき、利用者の評価を分析して生産性の向上につなげること、そこにICTやデジタルの力を入れると効率が高まると、RAJCの講座で学びました。

今年度は職員もセミナーに参加。改革は、マネージャーの川村重徳氏を中心に進めている。

無駄とミスが多かった通販システムを専門家の分析で改良

鳥取二十世紀梨記念館(なしっこ館)は、特産の梨について紹介するだけでなく、出荷時期には梨を対面とオンラインで販売している。しかし受注から発送までの作業量が多く、職員に大きな負担がかかっていた。そこで、RAJCの専門家派遣を要請した。

川村氏:システムがうまく組めていませんでした。発注、手配、発送がそれぞれ別のシステムを利用していて、どれだけ無駄を生んでいるかを、専門家に教わりました。工程を俯瞰的に見て分析いただけて、問題点がより明確になりましたし、自分たちの仕事を見つめ直す良い機会にもなりました。来年からの運用に向けて準備中です。

システムを統一すれば、受注時の入力を手で移し替えるなどの作業がなくなり、現場の負担とミスを減らせる。また、発送までの時間が短縮できるメリットも期待できる。

DX化を接客の充実と職員のスキルアップの足がかりに。アフターコロナに向けて観光客分析も実施

財団の職員は、全施設で約220人。限られた人材を生かして最大限の成果を上げるには、あらゆる転換が必要だ。

川村氏:財団内で、全体にDX化が遅れています。スマートフォンも普及していなかった20年前と同じ仕事の仕方をしていては、変化に対応できません。機械にできることは機械に任せて、私たちの本分である、もてなしや接客に力を振りたいのです。

「鳥取DX推進フォーラム」「AIを活用したマーケティング戦略講座」などを受講した川村氏。時代の転換点を生き残るためのリスキリング、県内での成功例などが印象的だったという。

川村氏:マーケティングは宣伝技術よりも鳥取県の良さを紹介して少しでも出合いの機会を増やしたい。施設や鳥取県がどのように人の目に触れているか、来県客がどんな期待をしているか分析して掘り下げ、施設運営に反映させたいですね。

スマートフォンにフォーカスした情報発信で誘客促進。来館・来園者の笑顔のために職員の満足度向上へ

今後財団は、主要な情報収集ツールであるスマートフォンによる情報提供に力を入れる方針だ。オウンドメディアや地図アプリ上の情報も整備し、誘客に繋げる。同時に職員のワーク・ライフ・バランス、満足度向上にも努める。

川村氏:私たちの財産はスタッフ。最大限の能力を発揮して輝けるよう、効率化によってスキルアップに多く費やしてほしい。お客さまに笑顔になっていただくには、職員が笑顔でないと。さまざまなイノベーションを通して、この職場で働いて良かったと思ってもらえるようにしたいと思います。

仕事を心から楽しんでいる笑顔のもてなしが、観光立県・鳥取県を支える。


SEMINAR

セミナー紹介

■一般財団法人鳥取県観光事業団の場合

ハンズオン支援を活用し、ECサイトの一貫したシステムの構築を目指す

ハンズオン支援

事業者の抱える課題を解決し、ICTを活用して雇用環境の改善や生産性の向上を図ることで、正社員を雇用しようとする意欲的な取組を支援するため、専門家の派遣を行います。

対象者:
ICTを活用した課題の解決(雇用管理・業務改善・情報インフラ整備)に向けた具体的な取組支援を希望する、自動車関連、情報関連、観光、食、医療・ヘルスケア分野などの事業者


VOICE

働く人の声

DX化で事務効率化を促進。生まれた時間でサービスを向上

マネージャー 芝田 あゆみさん

これまで花回廊や燕趙園、かにっこ館などで勤務してきました。2022年から本部で、会計や労務管理など各施設の事務を統括しています。
DX化などの改善については、私も事務の効率化を進めてきたので、とても期待しています。効率化によって空いた時間を、新しいサービスを考えるなどお客さまのために使いたいと考えています。デジタル化は年末調整などから徐々に進めて、その良さを職員に知ってもらいたいと思っています。各施設の事務負担軽減のためにも本部が率先して効率化したいですが、デジタルに詳しくないので、セミナーには積極的に参加しています。いつも最先端の情報に触れられ、本当にありがたく学んでいます。

RAJC(鳥取県地域活性化雇用創造プロジェクト推進協議会)の
支援事業やセミナー開催情報については、RAJCウェブサイトをご覧ください。

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