ホテルセントパレス倉吉
総支配人 山田 公 氏

JR倉吉駅前に立地するホテルセントパレス倉吉は、鳥取県中部地区で最大級の客室数を誇るホテルだ。「ヨーロッパを感じられるホテル」をコンセプトに、現地から買い付けたアンティークの調度品で贅沢で非日常的な空間を演出し、県内外の人々を一流のサービスでもてなしてきた。宿泊、宴会、婚礼、レストランを主な事業の柱に成長を遂げてきたが、創業55年目となる2020年から1年以上コロナ禍に見舞われ、業績が悪化。そこで、新たな柱としてヴィーガンを販売する事業を立ち上げた。
本記事では、コロナ禍でダメージを受けたホテルセントパレス倉吉が、ピンチをチャンスに、特性を生かした新事業に挑戦し、大逆転を狙う取組を紹介する。
目次
専門家派遣でEC事業へ参入。自社開発のヴィーガン料理で勝負を挑む
新型コロナウイルス感染症による行動規制は、ホテルセントパレス倉吉(以下、セントパレス)にも甚大な損害をもたらした。宿泊客はぱったりと途絶え、ブライダル、宴会とも9割落ち込み、レストランは休業を余儀なくされた。感染症が落ち着いても従来の客足に戻るまでにはしばらくかかると見込み、自慢の料理を何とか提供したいと新たな活路を模索した。考え抜いた末に辿り着いたのがEC事業だ。オリジナルの商品を全国に届けられる。問題は何をどのように販売するかだった。既に多く販売されているカレーやシチューで注目を集めるのは厳しい。そこでセントパレスはRAJCに相談。EC事業と食に精通した専門家が、企画からサイト設立、販売戦略まで幅広く助言。その過程で見出されたのがヴィーガン料理という商材だ。
山田氏:山田氏: もともとセントパレスでは、料理研究家のカノウユミコ氏監修のもと、ヴィーガン料理を提供していました。ヴィーガン料理の専門店はネットにほとんどなく、全国展開をしてもある程度シェアを取れると考えました。
尖ったニッチな商品にこそ、シェアを広げる可能性がある
ヴィーガンは海外では市民権を得てきたが、国内ではまだごく限られた存在と考えられる。専門家は「ネットショップではそういうニッチで尖った商品こそ売れる可能性がある」と説き、鳥取の食材を多用したヴィーガン料理で勝負を挑むことにした。
山田氏:スタッフ4人をEC事業部に配置し、専門家とともにEC事業の勉強、販売商品の模索、サイト立ち上げを並行して進めていきました。9月にオンラインショップを立ち上げ、いま毎日注文が来ています。
手応えは十分。将来的に、セントパレスの事業の大きな柱として育てたいと考えている。
顧客情報や口コミのAI分析を活用できる若手人材を育成。成長・貢献のチャンスにスタッフのモチベーションがアップ
EC事業で課題となるのが、集客とリピーター獲得だ。ただ良質な商品を提供するだけではなく、データに基づく戦略が必要となる。セントパレスはAI分析を導入し、その使い方を若いスタッフらが学んでいる。
山田氏:専門家によれば、「自動販売機ではないのだから、お店を開いただけでは買ってくれない」とのこと。購入されたお客さまのデータを今後に生かすためAI分析を導入し、若いスタッフ
にRAJCの「AIを活用したマーケティング戦略講座」などを受講してもらって、分析データを使いこなせる人材を育成しています。
AIで顧客の傾向がつかめれば、SNSなどで年代や性別などのターゲットをピンポイントで定めて広告を発信でき、効率的な運営につながる。口コミ情報の活用も必須だ。新しい技術の習得には困難もつきものだが、「自分で考えて動く」若手たちの能動的な姿勢が、成功の鍵を握っている。
伝統の「おもてなし」でECの顧客からセントパレスのファンへ。新たな事業展開にも意欲
セントパレスの強みは、特異なヴィーガン料理だけではない。培ってきた「おもてなし」の心、細やかな配慮で、オンラインショップという非対面のやりとりでも顧客に安心感を与え、セントパレスや鳥取への関心も高めたいと考えている。
山田氏:ヴィーガン料理を入り口に、ホテルにも足を運んでいただき、活気を戻したい。
振り返れば、同じことを何十年も続けてそれでいいと思っていたのが間違いでした。これからも偏った形の事業ではなく、いろいろな形で複数の事業の柱を作っていきたいと思います。
ピンチから生まれたビジネスがどう化けるか、今後に期待が高まる。
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