株式会社新藤
食品事業部・通信販売事業部統括部長 米村 智宏 氏

株式会社新藤は、全国屈指のラドン含有量を誇る三朝温泉の温泉街に位置し、三朝町内や倉吉市内の宿泊施設や飲食店などに食品や酒類を卸している。顧客の喜びを社訓とし、地域に根ざしたサービスで信頼を得て、間もなく創業107年を迎える。主な事業は食品・酒類・小売・通信販売の4事業。コロナ禍で卸や小売りが苦戦するなか通信販売が堅調に業績を伸ばすが、会社の規模を支えるには及ばない。この難局を乗り切るために新藤が着手したのは、事業改革ではなく、人材育成だった。
本記事では、抜本的な社内改革をめざし、まず「育成する立場の人材」の育成から開始し、全社員を巻き込んだイノベーションを進める新藤の取組を紹介する。
目次
社員を育成する中堅リーダーを育成。目標管理シートの改善でモチベーションが向上
コロナ禍の影響は想像以上だった。苦境を乗り越えるために考えを巡らすなかで、体制や部署の垣根などの課題も浮かんできた。特に人材育成は、社員の高齢化もあってコロナ禍の前から急務だった。もともと新藤では、部署ごとに目標管理シートを活用していた。会社が提示した目標をどれだけこなせるかの実績評価で、本人の努力とは別の要因で結果が出ない場合など、社員の本質を見極められないという問題点があり、部長らは部下の指導に悩んでいた。
米村氏:部下を指導するにあたり、まず指導するべき部長らが指導スキルを身につけていないと先に進まないと痛感していました。今年、部下を指導する立場の社員2名をRAJCの「中堅リーダー育成講座」に派遣しました。
講座での学びを参考に、今年、全社員共通の改訂版目標管理シートを導入。社員が自分で見つけた課題にどう取り組んだか、その過程に着眼して育成する手法に切り替えた。この手法により、現状に基づいた目標と、そこに至るまでのプロセスを組みやすくなった。目標達成を重ねて、社員の幸福感が高まることを部長らは願う。また、人事評価にも用いられるため、努力の評価が「見える化」され、社員が納得しやすく、定着率向上にも期待が高まる。
リーダーの役割を自覚し、部長らが成長。講座により、部長クラスのスキルの伸びも感じられている
米村氏:いままでは他の部署の悩みをあまり聞けていませんでした。講座を通じて、自分の部署の仕事だけでなく、上司と部下、部長同士の連携も重要だと理解できたのではないでしょうか。会社全体を見渡せるような部長育成ができ始めたと感じます。
役割を学び、部長らは秘めた力を発揮し始めた。
ダイナミックな横断的組織が誕生。部長で構成する「SQサークル」が会社を変える
「SQサークル」は新藤クオリティの略で、いわゆるQCサークルにあたる。講座で社員から経営トップまで活動全体を有機的に結び付ける仕組みが必要と学び、設立した。メンバーは部長5人と社員代表1人の計6人。禁煙ルールづくりなど小さなことや人事に関わる大きな内容まで、あらゆるテーマに取り組んできた。
米村氏:米村氏: 各部長が自分の部署以外の仕事も理解し合い、横の連携が取りやすくなりました。サークルではさまざまな本音や意見がどんどん出ます。問題解決や決裁が早くなり、ワンマン的な体制が変わりつつあると感じます。
連絡はミーティングのほか、Googleドライブなどを使う。各部の忙しさや手の空き具合を日々確認し、時間単位で応援を送り合えるようになって、社内の残業時間の短縮が進んでいる。部長だけでなく、社員同士の連携も強くなった。今後サークル活動を全社員に広げる方針だ。
自主的に考え、行動できる会社に。上司と部下の意識共有が理想
中堅リーダー育成によって部署間の連携や社員主導の運営体制が生まれるなど、新藤はいま、大きく生まれ変わろうとしている。今後、この流れをどのように育てて行くのだろうか。
米村氏:やはり会社に指示されて動くのではなく、目標管理シートなり、SQサークルなり、自主的な活動によって自分たちが考えて行動できる、そういう会社にしたいですね。
上司が一方的に指示するのではなく、かといって社員が勝手気ままにするのでもなく、「自分はこれがしたい」「それは進めていい」「これは君にはまだ早いかも」など、互いに意識を共有しあって前に進むのが理想とする姿。社員が生き生きと働きがいを感じられる職場づくりをめざす。
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