株式会社アベ鳥取堂
代表取締役社長 阿部 正昭 氏

アベ鳥取堂は明治43年に菓子製造業として創業し、昭和18年に駅弁の製造を始めた。代表作「元祖かに寿し」など鳥取の名物を弁当という形で伝え、鳥取の観光産業に大きく貢献するともに、市民にも地元の味として長く親しまれている。現在は仕出しや箱膳なども手がけ、駅弁の種類も約20種に増えた。業務が移り変わるなか、生産体制も見直しが必要となってきた。
本記事では、商品の多様化や働き方改革など時代の変化に対応するため、生産体制の改革、中堅リーダー育成に取り組んで、より働きがいのある職場をめざすアベ鳥取堂の挑戦を紹介する。
目次
セル生産手法を導入し、生産体制を変革。効率化により、働き方改革も促進
駅弁を作り始めて70年。当初は少品種・大量生産だったが、いまや駅弁の種類は約20種。仕出しの皿盛りや箱膳なども受注している。少量多品種を製造するには、ベルトコンベアーによる流れ作業では仕事の流れを作りにくくなった。そうした課題を整理して、効率よく製造できる体制を作りたいとアベ鳥取堂はRAJCに相談。専門家が現場に入った。専門家は、1つの商品を1人で完成させるセル生産という手法を提案した。スタッフ1人を1セルと数える。
阿部氏:従来は数が少ない受注に対しても全体で作っていましたが、セル生産では、1人で1品種を作ります。そうすると、この人は1時間にいくつ作れるか、あの人はいくつとか、個々の能力を組み合わせて計画的に生産できるのです。
ライン生産では一定の人数が必要となる上、手の遅い人に合わせなくてはならずスムーズに回らない。セル生産では手の早い人、遅い人を組み合わせて必要最小限のセルで進められ、休みを取りやすくなるなど働き方改革にもつながる。
生産管理板とスキルマップで責任感と目標意識を育てる
そうした日々の計画を見える化するのが、セル生産用の「生産管理板」だ。セル生産では責任の所在も明確になるため、スタッフが自覚を持って成長していくためにも役立つと期待される。また、個人の能力が明らかになるため、スキルマップの導入も検討中だ。
阿部氏:例えばAさんが1時間に30個作れるなら、次の目標をどこに置くか。一人ずつが目標を持てるスキルマップを視野に入れながら、今後も改革を進めたい。
商品も働き方も多様化するいま、アベ鳥取堂も大きな変革期を乗り越えようとしている。
体制の変革に伴って増した中堅リーダーの重要性。育成セミナー受講で円滑なコミュニケーションへの兆し
アベ鳥取堂は年中無休でシフト勤務制だ。近年働き方改革によって休暇の取得が増えており、またスキルマップ導入を考える上でも、現場を取りまとめるリーダーの重要性が増している。アベ鳥取堂では、RAJCの中堅リーダー育成講座に社員を派遣した。
阿部氏:コミュニケーションなどについて学んでいると聞いています。現場も少しずつ、いい具合に変わってきていると感じます。社内で自分たちだけで勉強するのと違って、外の考えを入れて一人一人成長してくれていると感じます。中堅がスキルアップしないと下の人も育ちません。全体としてレベルが上がってくれるのを期待しています。
中堅リーダーに求めたいのは、自分たちのメンバーをしっかりまとめて、一つの方向に進んで向かっていく力だ。中堅リーダー育成は最重要課題と捉え、今後もレベルアップに取り組む。
食を通してお国自慢を続けたい。変化を乗り越えて新たなステージへ
戦中の物資も物流もない時代に始まったアベ鳥取堂の駅弁は、いま鳥取の食の豊かさを全国に発信する存在となっている。
阿部氏:私たちは食を通してお国自慢をしてきました。「食」という字は「人を良くする」と書きます。多くの人に鳥取の自慢を食べて、喜んでいただきたい。社員にも「鳥取にはこんな美味しいものがあるよ」と自慢できるようになってほしい。それが最終的にめざすところです。
そのためにいま、変化を乗り越え、さまざまな勉強を通して社員も会社も成長し、お客さまの期待に応えたいですね。
鳥取の食文化を支える老舗の改革は、いま始まったばかりだ。
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