長期的な視野に基づくICT化と人材育成 常に進化を求めるグローバル企業

アイエム電子株式会社
代表取締役社長 野口 正堅 氏

2020.11.30

RAJC Report 編集部

アイエム電子は自動車の自動運転に必要な電装部品や、スマートフォンなどに使用される電子部品を生産している。当初はモーター回路が主力製品だったが、業界全体で生産が海外に移るにつれ、自動車部品への特化に舵を切る。現在は家電や自動車の国内大手製造メーカーと取引し、0.4〜0.2mmの微細な部品を一瞬で高密度実装するなど高度な技術を武器に、超小型化の波に対応しながら業績を伸ばしている。
国内では岩美工場のほか県内に2工場、海外では中国・タイにそれぞれ拠点を持ち、グローバルな経営を行っている。

本記事では、日ごろからセミナー等で情報収集に努めるアイエム電子による、ICT技術と人材育成によって「アイエムism」に基づくものづくりを継承するための取り組みを紹介する。

企業データ

アイエム電子株式会社

1970年、岩美町に「岩美電子工業」として創業。移転と拡大を繰り返し、国内大手メーカーと取引する企業に成長した。

住所:鳥取市山城町6-40
電話:0857-37-1800

ICT活用とテレワーク導入で新たな働き方へ。場所からの解放が広げる可能性

日ごろからRAJC主催セミナーなどに積極的に参加してきたというアイエム電子。常に最新の情報にアンテナを張り、必要に応じて新システムの導入などを行ってきた。

野口氏:従来のやり方は変えていかないと仕事の質は上がりません。現状維持では滅ぶだけです。RAJCのICTセミナーでは、いま技術がどれだけ進んでいるか、自分たちが取ろうとする方向性の正しさなどを再認識できました。

工場の見える化は既に進めていたが、このたびセミナーに背を押され、コロナ禍を機に、事務部門を対象にテレワークの導入準備に着手した。

野口氏:テレワークは自分のペースで仕事できたり、自宅で子どもを見ながら業務をこなしたりと、働きやすい面があると思います。一方、社内コミュニケーションが減る心配もあるので、その辺り注意しながら進めたいですね。

会社の外部から社内サーバーに接続するとなると、セキュリティ対策が肝要。野口社長はしっかりと予算をかけて取り組む意向だ。また、工場現場で働く従業員の安全、感染リスク低下も同時に思案している。

オンラインの会議・面談が商談チャンスを拡大する

工場間や海外拠点とのやりとりは、既にオンライン会議が定着していた。このたびのコロナ禍は、その流れを営業部門にも広げた。

野口氏:営業はお客さまのもとへ足を運ぶのが本来ですが、鳥取は都市部と距離があります。オンライン営業なら移動時間を節約でき、何社とも面談できます。大きなメリットです。従業員は積極的に活用しており、顕著な成果はまだですが、継続が大事だと考えています。

勤務も営業も「その場へ行く」スタイルからオンラインへ。働き方の変化は、WLB、経営戦略を大きく変えそうだ。

10年、20年後のリーダーを、いまから育てる。年代層バランスを克服する長期的人材育成計画

現在の従業員は150人弱。40代以上と20代の層が厚く、30代が少ない。10年、20年後にリーダーとなって会社を牽引するのは、いまの20代を中心とする若者たちだ。アイエム電子はOJTに加えて研修を活用し、若いうちからリーダー人材の育成に取り組んでいる。

野口氏:若手は受け身な姿勢になりがちですが、ものづくりでも事務でも、常に問題意識を持ち、解決していくマインドへ変えていきたい。それが生産性、効率向上につながります。セミナー参加によって、そうした気づきを得てくれたらと願っています。

研修を受けた従業員からは、意識の変化やコミュニケーションが良くなったと報告されている。期待するのは、現場の気持ち、顧客の考えを身近に感じながら、リーダーシップを取って工場の改善活動を進めていける人材。アイエム電子の未来は、彼らに託されている。

顧客・品質の維持とさらなる海外展開。攻守両輪で企業競争を勝ち抜く

量産のものづくりは、常に競争にさらされている。顧客の信頼向上、QCD厳守が次のビジネスにつながるとしつつも、野口社長は将来の構想を大きく描く。

野口氏:ニーズに応じて、更なる海外拠点も見据えています。そのとき必要なのは、現地法人をまとめ上げて運営できる人材。いま、ここが課題なんです。研修を受けたメンバーから将来の現地社長や幹部を育て、新拠点展開をめざしたいですね。

願うのは、従業員一人ひとりが楽しく働けること。楽しければ長く勤められ、熟練度が上がる。その先にこそ、企業の成長がある。ものづくりの喜びを伝えつつ、ICTや研修を活用しながら楽しい職場づくりに努めている。

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