増設した新工場をIoTで直結。新事業へ向けた設備と人の体制づくり

株式会社 新興螺子
専務取締役 鷺森 渉 氏

2020.12.21

RAJC Report 編集部

新興螺子は、大阪に本社を持つ冷間圧造加工品及び二次加工を加えた精密製品を製造、販売する企業だ。1980年に北栄町に鳥取工場を設立し、2019年、事業拡大に伴い倉吉工場を増設した。
主に自動車や土木建設に使用される金属部品を製造しており、なかでも自動車部品ではシートベルトに使用する金具を中心に、ブレーキなど重要な部品を多く納めている。そのほかプロ野球チームのホーム球場の基礎、新幹線のレール部分など、全国至るところに、高い強度を誇る新興螺子の製品が使用されている。

本記事では、離れた2つの工場を運営する新興螺子が、IoT導入や人材育成によって業務効率化、コミュニケーション促進の効果を生み、次のステップをめざす姿を紹介する。

企業データ

株式会社 新興螺子

冷間圧造加工品の製造・販売企業。本社は東大阪市。国内工場を鳥取県の北栄町と倉吉市に持ち、約80人が勤務する。

住所:倉吉工場 倉吉市秋喜240
電話:0858-27-1250

IoT導入で情報を見える化・共有化。生産性とコミュニケーションを促進

北栄町の工場で約40年にわたり生産を続けてきた新興螺子は、昨年、車で15分ほどの距離に新工場を設立した。
棟は別でも、連携・連動して効率の良い生産をしなくてはならない。それぞれの工場で何がどれだけ製造されているか、どんな問題が起きたかを毎日ファクシミリや車の定期便を使って紙ベースでやりとりしていた。しかし1日1度のやりとりでは互いの情報を把握しきれず、問題対策への遅れもしばしばだった。

新興螺子はRAJC主催の講座をはじめ、種々のセミナーを受講して職場づくり、業績向上に取り組んでいる。そこで得たヒントから、昨年IoTによって2つの工場の情報を共有できるシステムを導入した。

鷺森氏:IoT導入前は1日1度の情報共有でしたが、いまはオンラインでいつでも生産状況を確認できるようになりました。設備の稼働状況、生産効率の善し悪しがすぐにわかるので、悪かったときの原因究明と解決に素早く取りかかれます。生産効率向上につながっていると感じます。

役職者のオンライン朝会も始まった。どちらかの工場へ移動しなくても、前日の進捗や問題点を報告し合い、解決法を話し合える。業務のスピードが上がり、両工場間で助け合ったり業務を補い合う場面が増えた。

情報のデジタル化でロス軽減。さらに自動化を進めて効率向上へ

IoT活用のための情報デジタル化によって、これまでの作業が見直され、重複する作業や無駄な工程が見えてロス軽減につながっている。

鷺森氏:今後さらにデジタル化、自動化を進めたい。生産性向上を、職員の働き方改革にも活かしたいですね。また、効率が上がって時間にゆとりができたら、新製品の開発やより付加価値を高める取り組みにも着手したいと思います。

デジタル革命で、人も物づくりも進化して行く。

外部研修や動画教育で人材育成を強化。働きやすく生産性が高い職場づくりをめざす

管理監督者を中心に、新興螺子は物づくりへのヒントを求めて外部セミナーや異業種交流に積極的に参加してきた。

鷺森氏:限られた予算のなかで、トップがめざす姿をいかに現場に落とし込み、現場の声を吸い上げて改善するか。そういうことを理解し、働きやすい職場のために現場と経営者両方の目線を持つ人材を育てたいのです。

今年度もRAJCの中堅リーダー育成講座、管理者育成講座などに若手の管理職候補や係長級の職員を送り出し、経営目線を持った現場管理を期待している。
また、技術教育で動画を活用。紙のマニュアルでは表せない熟練の技術を、その場でタブレット端末を見せて指導する。覚えが早くなり、個人復習が可能なため教育時間が短縮されている。

イノベーションを成長の礎として、製品の高精度化に挑戦し、事業拡大をめざす

1日に15万個の部品を生産する新興螺子。エンドユーザーの目に見えなくても、製品は自動車の中で、建物の基礎などで、人命を守る大切な役割を果たしている。
日々品質を厳しく管理し、顧客満足に努めるが、現状維持に甘んじているわけではない。

鷺森氏:今後世界競争を生き抜くためには、いまの加工レベルでは厳しい。もっと精度の高い自動車部品に取りかかろうとしています。それによって受注の幅を広げ、業界シェアを伸ばしていきたい。

今回のIoT導入、人材育成の改革は、新たな成長の礎となる。作業環境改善にも取り組み、効率化とモチベーション向上をめざす。

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