大山乳業農業協同組合
総務部総務課 課長補佐 大前 久則 氏

大山乳業は全国でもまれな、県内すべての酪農家が1つの組織となった酪農専門農協だ。一般消費者には生乳や乳製品の商品イメージが先行しがちだが、組合は酪農生産のための指導や生産資材の斡旋販売など酪農家を支え、生産から加工・販売まで一環して携わっている。
安全・安心の信頼が高い「白バラ」ブランドは、学校給食に採用されるなど県民なら口にしたことがないと言えるほど地域に深く浸透し、県民はもちろん、西日本を中心に広く愛されている。
本記事では、RAJCのセミナーなどを参考に従業員のモチベーションと結束力強化を試み、愛社精神の醸成をはかる若きイノベーターの挑戦を紹介する。
企業データ

目次
スキルマップで人材育成、モチベーションと従業員満足度向上を狙う
大山乳業は4年前に創立70周年を迎えた節目に、「育てる」をキーワードに将来のビジョンを発表した。「育てる」対象は、酪農家、商品などいくつかあるが、最も重視するのが従業員だ。昨年末には人材育成基本方針を策定し、具体的な取り組みを進めている。
従来、人材育成には力を入れてきた。RAJC主催のリーダー育成講座にも参加し、その内容を全社員の前で発表するなど、学びを共有している。
そうしたこれまでの研修などをいかして今回打ち出したのが、スキルマップの導入だ。
もともと製造部門で既に実施していた「力量評価表」をベースに、各部署の管理職が業務内容に合わせた項目を考案し、全6部門に展開する。
大前氏:現在、個々の従業員の得意・不得意が見えていない状況です。人事、異動、考課に満足できない声もあります。スキルマップは現状のスキルが数値で見え、評価に繋がるので、その辺りのギャップが埋まる期待があります。
従業員がやりがいを持てる環境、認められる環境を創出すれば、生産性が上がり、顧客満足にもつながる。従業員にもっと組合を好きになってもらえると考えています。
現状の把握と同時に目標設定。上司の指導方針、本人のやる気アップに
スキルマップは、現在の状況と同時にめざすべき目標が明確になる。管理職にとっても、部下を今後どう成長させるかの指針になる。
大前氏:たとえば、補助的な立場から1年ほどで一人前になってほしいなど、能力を見極めた方針を持てます。それを伝えて本人も頑張れる。組合として発展していくと思います。
運用においてはあくまで評価の参考であり、スキルマップがすべてとはしない。だが、これまで部署としての目標を基準に動いていた従業員が、個人の目標をどう掲げ、達成し、どう全体の利益につながっていくか、大きな期待が寄せられている。

働き方や設備へのヒアリングを実施し、女性が働きやすい職場づくりを推進。
女性リーダーの養成を進めて、より広い管理職への道を拓く
400人近い従業員のうち、女性は男性の約半数ほどだ。管理職的立場の女性は全体の16%と県が掲げる目標30%にまだ遠い。少子化問題の観点からも女性が働きやすい職場づくりは社会的使命と捉え、イクボス・ファミボス宣言事業所の認定も受けている。このたび更なる改善をめざし、要望のヒアリングなどに取り組んだ。
大前氏:現在、女性の育児休業取得率は100%。今後、男性の取得率アップを目指します。休業する従業員の業務を補うためにスキルマップを活用し、多能工化を進めます。
ヒアリングでは、制度的な不足は訴えられず、より広い休憩室、トイレ設備の向上などが求められた。今後、リーダー育成講座のようなセミナーの女性受講者を増やし、いま以上に女性が管理職として活躍できる環境を整えていく。

役割を自覚して果たし、喜びを感じられる職場に。一人ひとりが「白バラ」のような存在をめざす。
イノベーションに望むにあたり、大前氏は次のように展望を語る。
大前氏:すべての従業員が仕事に満足できる環境を整えたい。仕事に対して「自分の役割」と認識し、その役割とは何かを理解して全力で取り組む。それによって人から頼られ、人を笑顔にする喜びをもっと感じていけたらと考えています。
大山乳業といえば「白バラ」。花言葉は「正直」「純粋」「私はあなたにふさわしい」などがある。「白バラのような存在になろう。純粋な心を持ち、大山乳業の商品を待つたくさんの〝あなた〟にふさわしい人でいよう」そんな思いを込められたブランド名を胸に、組合一丸となってより良い未来をめざしている。

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