たゆみない研究に裏付けられたサービスで地域福祉を牽引

社会福祉法人 こうほうえん
よなご幸朋苑介護課長 戸田 悦子 氏

2018.03.01

RAJC Report 編集部

こうほうえんは、老人福祉を主軸に保育や医療、障がい者支援など、鳥取県下と東京都に41拠点216事業を展開する、県内最大規模の社会福祉法人だ。介護施設では「個の尊厳」を基本とし、自分でできることが増え、利用者が元気になると評判が高い。
人材育成に力を入れており、新人はエルダー制度でしっかりと教育する。研修、資格取得、研究、大学院進学など、勉強を求める人は法人が積極的に支援。アメリカ旅行付き研究発表会も年に1度実施され、100題以上が発表される。こうした環境や人を大切にする職場体質が意欲を高め、離職率は10%以下に留まっている。
2014年、「卓越した経営の仕組み」を有する企業として、介護事業で初めて「日本経営品質賞 大規模部門」(鳥取地区介護部門が対象)を受賞した。

本記事では、スタッフの高いモチベーションを維持し、常に最先端の技術にアンテナを張って地域福祉を牽引する社会福祉法人こうほうえんの先進的な取り組みを、よなご幸朋苑介護課長の戸田悦子氏に2つの具体的事例とともに紹介いただく。

企業データ

社会福祉法人 こうほうえん

介護・福祉サービスを中心に、医療、保育、障がいなどの事業を融合させ、新たな複合施設を運営する。

住所:鳥取県米子市両三柳1400
電話:0859-24-3111

利用者の反応や表情を「見える化」し、共有して最適なケアへ

介護施設では、一人の利用者を何人かで担当する。スタッフがそれぞれにベストを尽くすなか、どんなケアを利用者が喜んでいるか、翻って自分のケアはどう受け止められているか、客観的にわかる方法はなかった。

戸田氏:利用者に対する自分の声がけや態度がどうなのか、なかなか知るのは難しいと思います。でも他の人と比べられたら、例えば自分の接し方で利用者が不穏になられたとき、理由を振り返る材料になると思うのです。

こうほうえんは慶應義塾大学と提携し、独自のアプリケーションを開発。日々スタッフが行ったケアと結果をスマートホンなどで入力し、情報を共有する。

介護状況を共有するアプリを、慶應義塾大学と共同開発

慶應義塾大学と共同開発したスマートホンアプリ「MIMOTE」では、食事や入浴、排泄などの際に利用者の反応や表情を5段階で評価する。考え得る理由やそのときの状況についても記入し、共有する。入力内容はデータ化され、分析・グラフ化も可能だ。

戸田氏:この作業により、他のスタッフが同じ利用者に接した結果がわかります。態度が違えば、その原因は何か。「この人はこうすると意欲が高まる」など、他の職員の行動記録から学べます。
一人の気づきがスタッフみんなの気づきとなり、その利用者に最適なケアに効率良くたどり着けるのです。

データ入力は手間がかかるが、自分のケアを客観的に振り返ることができ、他のチームとの比較が生じてスタッフの向上心が上がっている。 「入力のために、普段見逃していた細かなことまでよく見るようになった」と話すスタッフもおり、データだけでなく、アプリを活用するための心構え自体が、サービスの質を高めている。

職員、利用者ともに安心・安全な「ノーリフティング」

介護・看護業界で腰痛に悩む人は多く、離職の要因にもなる。スタッフの身体負担を軽減し、長く勤めてもらうために「ノーリフティング」を宣言した。

戸田氏:以前はご利用者を人の手で運んでいましたが、スタッフによってやり方が異なることもあります。より安全に移乗するにはどうすれば良いかを考え、福祉機器に至りました。

「ノーリフティング」とは、移乗の際に福祉機器を使用し、人の力で持ち上げない、抱えない、引きずらないこと。
具体的にはリフトやスライディングを使用して移乗や移動を行う。

戸田氏:リフトの良いところは、誰がしても同じやり方で移乗ができることです。利用者の方にとってより安心・安全だと思います。スタッフの腰痛予防にも繋がっています。

これまで「仕事は好きだが身体が続かない」と職場を離れた人も何人かいた。手塩にかけて育てたスタッフがそのような形で失われるのは大きな損失だ。
「ノーリフティング」の実践は、長く働ける環境づくりを大きく前進させるだろう。

「地域との共生」と「地域との連携」を事業の柱へ

現在、戸田氏はたびたび機会を得て地域住民や中学・高校生たちに、こうほうえんについて話をしている。

戸田氏:私たちがどのようなケアをし、介護者の健康をどう守るか、情報発信に力を入れたいと思います。

生徒たちからは「介護はやりがいのある仕事と感じた」などの感想が聞かれるという。
こうほうえんは目の前の地域福祉を支えるだけでなく、未来の福祉のための種まきを、すでに始めている。

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