海色・湯の宿 松月
代表取締役社長 福元 隆司 氏

目の前に日本海の海原を望む「海色・湯の宿松月」。創業は昭和2年、皆生温泉でもっとも歴史ある旅館だ。心を尽くしたおもてなしと自慢の温泉、地元の旬の素材をふんだんに活かした料理は、国内はもとより海外客にも好評で、JTBのお客さま満足度調査では7年連続エリア1位、楽天トラベルゴ—ルドアワ—ド7年連続受賞など高い評価を受けている。
本記事では、姉妹館「游月」の開館にあたり、お客さまにより質の高い滞在を提供するべく行っているICT導入・サービス向上施策などの取り組みを紹介する。
目次
ICT導入でスタッフ間の情報共有とコミュニケーションを促進。さらなる顧客満足度・生産性の向上を狙う
松月は19室という限定された部屋数で、ゆったりとした滞在空間と行き届いたサービスを提供できることが特長だ。
だが、顧客のニーズが多様化するにつれ、課題も生じてきた。
福元氏:細やかな対応を心がけるあまり、「遅い、忘れた、間違えた」のエラーがしばしば生じました。PHSや内線は多忙で取れないなど、うまく伝わらないときがありました。
そこでRAJCに相談し、ICTの導入を検討。その結果、2つのシステム導入を決めた。
1つはタブレット端末だ。スタッフ全員に端末を持たせることで、宿泊客の人数や到着時刻の変更などの情報が瞬時に伝わる。厨房にも表示するための大画面モニタを備え、料理の時間変更などにもスムーズに対応できるようになった。
2つ目は、全館Wi-Fiを利用したインカム。業務伝達が円滑になった上、特定の人へ向けたメッセージも全員の耳に入るため、当事者が内容を忘れても他のスタッフがカバーできる。
福元氏:ICT導入後、現場が変わりましたね。特にインカムは、なぜこれまで使わなかったのかと思うほど。お客さまからの質問も、担当者のもとへ走らずその場で確認できます。

宿泊業情報管理システムの開発実績がある専門家の派遣により、業務効率化実現がよりスムーズに
RAJCでは、ICT導入にあたりヒアリングと綿密な打ち合わせを重ねた上で、クラウド型ホテル・旅館情報管理システムの開発実績がある専門家を派遣、業務効率化もサポートした。
福元氏:派遣いただいた専門家には、ICT導入に当たって自分の考えを落とし込むプロセスから実務まで、全体的にサポートいただきました。井の中の蛙ならないよう専門家に学べることはとてもありがたいです。
ICT導入によって状況がリアルタイムに把握できるようになり、エラーとロスが大きく低減。コミュニケーションが促進されて部署間連携、生産性が向上し、宿泊客のより高い満足に貢献している。

「社内ソムリエスクールで人材を育成 、業界に先駆けた高付加価値サービスで、至福の食事時間を提供
料理の付加価値をさらに高めるため、お酒と料理の「ペアリング」を新たなコンセプトに据えた。その実現に欠かせないソムリエを社内で養成し、顧客満足度の向上と人材育成の両方を推進する。
JSA(※1)とANSA(※2)両方のソムリエ資格と唎酒師の資格を持つ社長自らが教鞭を執る「社内ソムリエスクール」を開講し、ワインなどの教材費は会社がほぽ全面的に負担、これまで調理師、フロントスタッフなど希望者が受講し、ソムリエ2人、唎酒師3人が合格した。今後、調理、接客それぞれの立場から至福の時間を提供することを目指す。
福元氏:2020年4月に、姉妹館「游月」がオープンするオーシャンビューのレストランでは、当館で育ったソムリエ・唎酒師がお客さまとお料理に合うワイン・日本酒を選んでご提供します。ソムリエ資格を持つ和食料理人は、まだ少なく、サービスの差別化が図れると考えています。
※1 JSA:一般社団法人日本ソムリエ協会
※2 ANSA:全日本ソムリエ連盟

施設+サービスの総合力を引き上げ、さらなる相乗効果も狙う。湯の宿松月が描く「将来の展望」
一見、人が心を尽くす「おもてなし」の価値観とは縁遠く感じるICT導入や、充実した社員教育を通して、ホスピタリティの向上、ひいては競争力強化・競合差別化までを図る福元氏に、今後の展望を伺った。
福元氏:良い旅館は、何か1つが飛び抜けるのではなく、あらゆる満足度が高くなくてはなりません。風呂、部屋、料理、もてなし、全てが優れていて、なおかつ手の届きやすい価格であること。総合点をさらに引き上げるべく、今後も社内教育を充実させていきます。
創業以来90年培われたおもてなしの進化は止まることなく、老舗旅館の新たな挑戦は今後も続いていく。

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