倉吉シティホテル
総支配人 松田 啓一 氏

倉吉シティホテルは、倉吉駅から徒歩7分ほどの駅前市街地に立地する。2019年チャペルを備えた新館「アネックス」が開館、2020年3月には本館がリニューアルオープンし、総客室数129、収容客数165人と、鳥取県中部最大規模のホテルとなった。
本記事では、より質の高いサービスを求めて人材育成の全般的な見直しを提案した総支配人の松田 啓一氏の話を交えながら、スキルマップ導入などES向上からCS向上をめざす倉吉シティホテルの取り組みを紹介する。
目次
外部の目で体制を見直し、改善に着手
どんなに設備を充実させても、そこで働く従業員の意欲がなくては客の満足につながらない。家づくりで土台が肝要であるように、運営を支える組織をしっかり固めようと、倉吉シティホテルは2017年からRAJCの専門家派遣を受けてイノベーションに取り組んでいる。
これまで各部門のマネージャーを中心に従業員全員が参加し、課題や改善方法を考えながら専門家が指導してきた。そのサイクルをステップアップさせながら回を重ね、上司教育、幹部人材育成も行う。
松田氏:外部の方に指導をいただき、給与面など当社に不足している要素が見えてきました。
専門家の方はとても話しやすく、従業員の意見をうまく引き出してくださいます。
RAJCは派遣した専門家と倉吉シティホテル双方に状況を伺いながら、改革の成果や進捗を見守っている。

スキルマップで人材育成。成長のスピードアップを実感
スキルマップは、個人面談と組み合わせて導入した。各自の自己分析をもとに各マネージャーが個人面談し、スキルの状況を互いに確認し合う。マネージャーは上司と、上司は最終的に支配人と面接する。
松田氏:目標が明確になり、成長のスピードが導入前より格段に上がりました。
スキルマップは当初私が作成しましたが、現在は従業員等が考案した改訂版を使用しています。自分たちが作った指標が、責任感をいっそう強めているようです。
スキルマップで導かれた評価は、給与に反映する。努力が報われやすい体制が築かれ、モチベーションを引き上げている。従業員の満足をサービス向上、利用客への満足に繋げるねらいだ。

ヘルプ手当を導入。部署間交流の活性化で笑顔の職場に
1つの部署が多忙を極めているとき、他の部署のスタッフがしばしば応援に駆けつける。助け合いは必要だと感じつつも、仕事や労働時間が増えた不満が生じたり、助けてもらって申し訳なく感じる傾向があった。
そこで新たに設けたのが「ヘルプ手当」だ。他部署へヘルプに行くと、残業手当とは別に手当を支給する。手伝った分給与が加算されるのでヘルプへの抵抗が減り、手伝ってもらう部署も、心おきなく助けを求められるようになった。
松田氏:従来は依頼があってからヘルプに出向いていましたが、手当制度を始めてから、「この日は忙しそうだけど大丈夫?」など他部署に対し自発的に声を掛け合うようになりました。
部署を越えた交流がますます活発になり、職員の笑顔が増えて、ホテル全体の雰囲気が向上に繋がっていると感じます。

1人の気づき・感動をみんなで分かち合う「感動レシピシート」
「感動レシピシート」とは、客の反応や言葉から得た気づきを記録し、発表して共有する取り組みだ。
「こんな風にしたらこう喜ばれた」「こういう指摘を受けた」など、良かった対応は継続し、反省点は改める材料とする。
高齢者や子連れ客はどうしたら助けになるかなど、1人のスタッフの気づき、喜び、反省を全員の学びとして蓄積し、客と従業員双方の感動のためのレシピを増やしている。
新館オープン、本館改装と大きな節目を迎えた倉吉シティホテル。客室数も増え、組織強化が今後ますます重要性を増す
松田氏:部下を持つ立場の従業員には特に、コミュニケーションを密に取るよう促しています。やはり人間関係が一番。その上で、今回のイノベーションのような職場改善を進め、従業員満足度を高めて、定着率向上にもつなげたいと思います。
観光客にとって、ホテルはまちの顔だ。倉吉市は、県立美術館新設やサブカルチャーの聖地として注目を集めている。宿泊客が気持ち良い滞在時間を過ごし、観光を満喫するために、またビジネスで活躍できるように、今回のイノベーションが大きな成果を発揮することが期待される。

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