三朝館(株式会社ラークコーポレーション)
代表取締役社長 沖田 雅浩 氏

鳥取県を代表する温泉地、三朝温泉で旅館を営む三朝館は1938年に創業し、2018年、100周年を迎えた。自慢は露天風呂を含めた12の多彩な湯船を満たす源泉掛け流しの薬湯と、洗練されたサービス。2013年から株式会社ラークコーポレーションが経営を引き継ぎ、年間約6万人の宿泊客をもてなす。
本記事では、経営交代以来種々の職場改善を進めてきた三朝館が、従業員のモチベーションアップといっそうのサービス向上をめざして取り組んだイノベーションについて、代表取締役社長の沖田 雅浩氏の話とともに紹介する。
企業データ
三朝館(株式会社ラークコーポレーション)
三朝温泉の100年旅館。総客室数73。ほか会議種や宴会場、食事処、ラウンジやスパなどを備える。

目次
多面的なイノベーションで意識と労働環境を変革
これまで三朝館は労働環境改善のため、たすきがけ勤務解消やスキルマップを活用したスキル向上及び均一化など、種々の改革を進めてきた。
さらに定着率上昇に向けて従業員の自主性を育てる仕組みを作り、同時にICT・IOTを導入して労力と時間の削減、サービスアップをはかる。 RAJCは専門家を派遣し、従業員の意識変化を起こすイノベーションを提案。ICT導入への助言も行った。ICT講座などセミナーで吸収した内容もいかし、多面的な改革を実施している。

「やらされる仕事」から「自ら考える仕事」へ。ワーキンググループによる自立型社員の育成
利用客を心からの笑顔でもてなすには、「上から言われてやる」のではなく、各自が業務の重要性を自覚して最適なサービスを「自ら考える」姿勢が重要と捉え、従業員の自主性を育む取り組みを進めている。
まずは日々「すべてはお客さまのかけがえのない一日のために」というクレドを確認。業務の目的をしっかりと共有した上で、ワーキンググループによる業務改善を行う。 フロント、接客、調理場などの各チームで日々の業務について話し合い、問題点や反省を洗い出して自分たちで対策を講じ、実践する。その際、沖田氏はほぼ臨席せず、従業員にまかせる。
沖田氏:従業員が自主的に内部講習会を開いたり、夏用喫茶を企画するなど、少しずつ変化が現れています。役員も従業員の意見や提案を受け止め、できるだけ反映して、イノベーティブな組織づくりを進めたいと思います。
この取り組みによって、トップとの距離が近くなり、提案が受け入れられる空気が出てきた。
各自が常に問題意識を持ち、考え、提案して実践することで、より良い労働環境、客の満足を自らが生み出している感覚が芽生え、意欲上昇、サービス向上につながっている。

マニュアル動画で技術学習時間を短縮し、心構えの教育を充実
もてなしの要となる接客業務などの教育は、これまで先輩従業員らが手取足取り教えてきた。しかし国籍や世代など文化背景が異なる場合もあり、多大な時間を要していた。
そこで専用アプリケーションを導入し、タブレットなどの端末を用いて、接客業務のマニュアル動画を社内で制作。いつでも端末で確認でき、社員教育や、現場へ赴く前の確認などに利用している。 また、eラーニングも併用し、スマートホンなどで自由な時間に接客を学習できる体制を整えた。
沖田氏:三朝館には、外国人の従業員も十数名います。言葉で伝えにくくても、動画なら視覚的に見て直感的に理解しやすい。とても助かっています。
動画の活用により、技術指導の時間は10分の1ほどに減った。
その分、もてなしの心構えの教育を充実させ、形だけでなく、気持ちを伴った接遇が徹底できるようになった。

宿泊業の労働環境イメージを刷新。笑顔あふれ、求職者に選ばれる旅館へ
三朝館の軸足は、クレドの「すべてはお客さまのかけがえのない一日のために」から頑としてぶれない。一連のイノベーションは、客を笑顔にするための、従業員の笑顔を増やす取り組みだ。
笑顔あふれる職場は、定着率向上、人材不足解消にもつながる。
沖田氏:宿泊業は労働環境への印象が良くなく、人材不足が課題です。改革によって悪いイメージを刷新し、お客さまだけでなく、求職者にも選ばれる旅館をめざしていきます。
沖田氏の改革は徐々に従業員に浸透し、新たな風土が生まれつつある。みんながやる気あふれ、若い人がいきいきと働く職場へ、日々一歩ずつ、理想に近づいている。

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