部署間連携で臨む、老舗旅館の「人を増やさない」課題解決

温泉旅館 丸茂
代表取締役 森田 聡一郎 氏

2018.12.01

RAJC Report 編集部

丸茂は大正元年創業の温泉旅館だ。JR鳥取駅から徒歩5分、繁華街の近くという立地ながら、館内は驚くほど静か。四季の移ろう庭を眺める客室で、国内外の観光客やビジネス客をもてなしている。
温泉は、自家泉源の天然掛け流し。たっぷりの新鮮なお湯が、日ごろの疲れを癒やす。2018年秋にリニューアルし、「YUBUNE壱・弐」と名づけた新浴場が誕生。これまでできなかった立ち寄り湯が可能になり、新たな客を呼んでいる。

本記事では、限られた数のスタッフでいかに業務効率を上げ、顧客満足度を高められるかに挑戦した丸茂の取り組みを、社長の森田 聡一郞氏の話を交えて紹介する。

企業データ

温泉旅館 丸茂

JR鳥取駅近くに湧く鳥取温泉の老舗旅館。宿泊のほか、レストラン、宴会の食事などを提供する。

住所:鳥取市永楽温泉町458
電話:0857-23-1311

人材も施設も、いまある資産を大切に生かしながら改革を進める

丸茂旅館は、全16の客室を約20人のスタッフでもてなしている。各自が多忙を極めれば、サービスの遅れや連絡ミスが発生しやすくなる。少人数でいかに質の高いもてなしを実現し、且つ職場としての魅力を保つか、長年の課題だった。

森田氏:人手不足の昨今、雇用を増やすにも勤務時間短縮や給与増額だけでは根本課題から脱却できません。私たちは新たに人を増やすより、いまの人材を大切にしようと考えました。

RAJCが派遣した専門家は、スタッフ間のコミュニケーション促進と部署間連携を提案した。

また、迅速な対応を妨げる要因の一つに、建物の複雑な構造があった。 浴場リニューアルに際して導線を変更し、スタッフの移動時間短縮を実現している。

「ゼンブジブンゴト会議」で部署間連携を進め、ICTで「ホウレンソウ」をスムーズに

「全ての仕事に他人事はない」。これが、このイノベーションで掲げるコンセプトだ。
客室や清掃といった部署の壁を越えて、手の空いたスタッフが多忙な業務をフォローし、客を待たせない形をとる。
「ゼンブジブンゴト会議」は、そうした新たな視点のもとに全員が参加し、各自が現場で思うことや問題点を挙げて全員で解決法を考え、実行する。

森田氏:自分たちの仕事の一方向しか見えなかったものが多面的にその仕事やお客さまへのフォローがよく見えるようになって、意見やアイデアもどんどん出るようになりました。

部署の壁を越えた連携を進めることにより、仕事全体の流れや客へのフォローが多面的に見えるようになった。
スタッフも自分が出した意見が実際に反映される実感が生まれ、会議では活発な発言が飛び交う。 現場では互いに手伝ったり、気付いたことを声掛けするなど、それぞれが助け合う風土が生まれている。

続いて森田氏はICTの導入に踏み切った。
ホテルシステムを導入し、各自がタブレット端末を持って情報を共有。社内SNSで時間外でも「ホウレンソウ」とその完了報告が確認可能となった。
部署間連携によって築かれたコミュニケーションの土台が、システムの利点を最大限に発揮。サービスの質、労働環境ともに大きく向上している。

浴場の改装を機に回遊型導線へ。顧客満足度UP・動線確保による作業効率アップ

丸茂は、建物がまるで迷路のような造りになっている。全体がコの字型をしていて行き止まりがあるため、客室へは付き添いが必須。到着から部屋に着くまで5分、10分と時間がかかる場合もあり、クレームの要因となった。
この問題を解決したのが、改装による導線の追加だ。

2018年、丸茂は老朽化した浴場をリニューアルした。その際、コの字の端と端を繋げてロの字型の回遊型導線を創出した。
館内をぐるりと巡るルートの誕生により、客室へのアプローチが改善。到着客はフロントの案内だけで部屋にたどり着け、館内の移動もスムーズに。スタッフも同じ通路の往復から解放され、効率的に動けるようになった。

森田氏:導線を確保することで従業員のご案内の所要時間が短縮され、他の仕事への注力ができるようになりました。案内時間が長くかかることによるクレームも軽減しますし、みんなが負担が軽くなる。
お客さまも従業員もより「丸茂」を利用しやすくなると思います。

なかには、年輩のスタッフもいる。移動が減れば身体的な負担も軽減され、長く勤めやすくなるだろう。

泊食分離やたすき勤務解消などを既に実施し、サービスの質を落とさずに働きやすい職場を作る取り組みを進めてきた

森田氏:お客さまにも、従業員にも幸せになってもらいたいんです。独自の強みを発揮し、わくわくする旅館を作っていきたいですね。

鳥取温泉を代表する老舗旅館のひとつとして、伝統を重んじ、従来の風情を生かしつつ、時代に合ったサービスを提供する丸茂。どんな「わくわく」が飛び出すか、今後も目が話せない。

RAJC(鳥取県地域活性化雇用創造プロジェクト推進協議会)の
支援事業やセミナー開催情報については、RAJCウェブサイトをご覧ください。

RAJCウェブサイト

Recommend あわせて読みたい